うつわに暮らしを映す。うつわ ももふく

掲載記事|BeCafe(現在はサイト閉鎖)

 

住宅街から少し外れたところにその店はありました。ガードレールのない道沿い、原町⽥と⾼ケ坂の境のあたり、住宅街から坂を少し下ったところに、ガラス越しに落ち着いた⾊合いの、趣味のよいうつわが⾒えます。

「うつわ ももふく」はオーナーの⽥辺さんが⼀⼈で切り盛りするうつわのお店。⾃らの⾜でうつわの作り⼿や窯元(かまもと)を訪れ、手に入れた普段使いの食器類を販売しています。

 

居心地のよい店内

木とガラスの古びた雰囲気のドアを開けたすぐのところに大きな木のテーブルが。天板は厚く、どっしりと重厚な造り。取材のこの⽇はちょうどうつわ作家・川⼝武亮さんの個展をやっていました。有⽥に居を構える陶芸作家さんです。

広い天板の上に整然とうつわが並びます。どれもお客さんが手に取って土の感じに触れたり、うつわの大きさや重さを感じてもらえるように工夫がなされています。

ももふくのうつわは、たしかに手に取ってみたくなるものばかり。

『粉引き』や『刷⽑目』と呼ばれる陶器の多くは⻘みがかった⽩または灰⾊の釉薬がかかっていて、シンプルなデザインのものが並びます。落ち着いた、静かな⾊合いが印象的です。

これは店主の田辺さんの信条でもあります。普段使いのうつわだからこそ、ももふくのWeb サイトの中にある⾔葉通り、『奇をてらったものではなく、シンプルな中にも美しさと品があり、心地よさとぬくもりを感じることができ、使うほどに味わいが増すもの』でそろえる。

同じ手法で作ったとしても、作家の個性がまずフォルムや風合いに宿り、それを手にした人が日々の生活を共にしていくうち、その人の暮らしが色濃く映し出されるのですね。

昨日が個展の初日だったというのに、ほぼめぼしいものが売れてしまって、常設展とあまりかわらなくなったとほほ笑みながら答える田辺さん。作家ものの個展では、たいていの場合、待っていましたとばかりにファンの方が次々と購入していくようです。

店舗探し

店内は数々の静かな⾊合いのうつわが収まりの良いように、濃い茶⾊の棚が置かれ、柱も棚と同⾊で統⼀されています。

原町田のこのギャラリー風の建物に引っ越して来て10 年が経つのだそう。それまでは⾃宅のある⽟川学園で4 年弱、お店を構えていました。

お店と⾔っても⽞関⼝にうつわを並べてそれっぽく体裁を整えていた程度のものだったそうで、とにかく⼿狭。きっと大きなお皿とかは平置きできなかったかもしれません。

お店選びもお一人でこなしたとか。もともとが建築関連のお仕事をされていたこともあったので店の設計図などは自分で引くこともできました。そこで、お店の⻘絵図にほぼ近い物件を、予算などと合わせて地道にあたっていったそうです。

原町⽥のお店はもともと⾐料品を売る店が出るというタイミングで出会った物件。⼿直しする箇所もごくわずかで済んだようで、現在の設えがそのまま生かされているようです。

在庫を収納する納⼾スペースはまるで壁に作り込まれた隠し棚のようになっています。

うつわを並べる家具類もすべて店主の田辺さんがチョイスしたもの。花差しに飾られた花もおそらく自前。庭に咲いていたものを摘んでこられたのでしょうか、⼀輪だけさりげなく差してあります。

そして気付くのです。このお店自体が、田辺さんの作品そのものなのだと。

 

お店のために人知れず努力

なぜうつわ屋さんなのかという問いに、好きだったからと端的にお話ししてくださる田辺さん。
ここまで来るのに、⼈知れず努⼒していらっしゃいます。まず、売り物に関する知識を増やしておくこと。

うつわはワインのように深い造詣の必要なものだと思います。

たとえば陶器。どこの土で焼かれたのか、作り方はどんなものなのか、釉薬はどんなものを使っているのかなどなど、フィーチャリングしていくだけでもかなりの知識量が必要です。

それでも「好きこそものの上⼿なれ」とばかり、⼤好きなうつわに関しては知識を得ることはそれほど苦にならなかったかもしれません。

彼⼥はまた調理師免許の資格も取得しています。

このお店、喫茶店としても展開できるように店の奥にはキッチンが設えてあったらしく、それを使わない⼿は無いだろうというのが資格取得のきっかけだったようです。

うつわをより魅⼒的に⾒せるのは、料理がのった姿だと直感。事実、うつわと⾷事がコラボした企画展を開催するなど、しっかり資格を⽣かしたプロモーションを⾏っているのです。

それからラッピング技術。うつわに合わせて箱と紙とひもで手早くおしゃれにラッピングしてくれます。

どんなお店にしたいか、どんな風にお店を展開して⾏きたいのかを⻑いこと温めて温めて、形にしたことが⼿に取るようにわかります。そのための努⼒は惜しまない、そしてその努⼒はあまり⼈にみせないように、さらりとかわすところも彼⼥の美学と⾔えます。

当初はオンラインショップとしての印象が強かった同店ですが、今はこのお店に訪れて購入する人とオンラインショップのユーザーはほぼ同じくらいだそう。

ずっと⼀⼈で⽀えてきたお店ですが、オンラインショップが盛況になったのを機に、ここ数年は週に数⽇の割合でアルバイトの方に発送やらを頼むようにしているのだそう。

磁器は青の絵付けのものでそろえられています。置物はごくわずかに置く程度。あえてうつわに特化しています。

 

うつわへのこだわり

ももふくのうつわの仕入れは、田辺さんがすべて担っています。仕入れるポイントは、自分の好みに合っているか。その一言に尽きるでしょう。

日々の暮らしに自然に溶け込む色と風合いを備えたうつわ。着慣れた服のようにしっくりとなじみのよいうつわなのです。

お店のコンセプトにあった作家さんと巡り会うためには、時間を惜しみなく使います。陶器市へ足を運び、うつわと出会い、作り手と出会う。窯元を訪ね、話をする。そうした作業は、けっして楽なものではなかったでしょう。地道に人とのつながりを紡いでいった結果、彼⼥が抱える作家さんは気付けば40名以上に。

作家もののうつわを扱うという彼⼥の商いに対する矜持(きょうじ)が、⼿抜きや妥協を許さないのです。うつわそのもののていねいな説明は、作り手の人となりを示します。それは、うつわが作り手の人物像を饒舌(じょうぜつ)に語ってくれるからなのです。

作り手との二人三脚

ももふくに出すうつわの中には、買い付けるものもあれば作家さんにオーダーするものもあります。うつわの大きさや厚みなど、実際に使ってみて印象を話したり、要望を伝えたりします。

そうした作り⼿とのやり取りが、彼⼥の“うつわを売る⼈”“うつわ屋の店主”としての気持ちを⿎舞してくれるのかもしれません。趣味では終わらない。かといって、“売らんかな”に走らない。

ありがちな⾔葉ですが、よい品物をていねいに売っているのです。そのせいか、ももふくでうつわを買っていく⼈はなぜか誇らしそうでもあります。

商売を続けて14年が経とうとしているももふくには、⾃⾝の作品を持ち込む⼈もいるそうです。作風がももふくにマッチすれば売る事もできますが、不幸にも作風が合わない場合も。

そんなときはむげに断るのではなく、自分の店のコンセプトには合わないけれど、その作品が合ううつわ店を紹介してあげるのだといいます。

うつわを作る人の中には、セルフプロデュースの上手くない人もいます。そうした人はわらにもすがる思いでももふくにやってくるのかもしれません。そうした人にもていねいに接するからこそ、オーナーと店の信⽤度があがるのかもしれませんね。

ガラスの物や、お箸やお盆など木工品も取り扱っています。

 

Instagramは大事な商売道具

取材中、気になった事がありました。経験上、大抵のお店は”写真撮影お断り”のスタンスなのですが、ももふくさんはジャンジャン撮影してもOKなのです。そのことをちょっと尋ねると、むしろウェルカムなのだとか。

”うちのような小さな店は、知ってもらうことが大事なので”という枕ことば付きで、Instagram の爆発的な広告⼒を教えてくれました。

事実、ももふくはウェブサイトを始め、SNS、Twitter、Facebookなどでもお店を宣伝しています。中でもInstagramは毎⽇更新。というのはInstagramは若い世代に圧倒的な⽀持を得ており、その訴求⼒はあなどれないからなのです。

Instagram世代は片時も情報を離さない

Instagram はパワーのある広告媒体です。画像というダイレクトに情報を可視化できるだけあって、手軽に情報を共有できます。さらにInstagramを駆使する⼈々は、⽚時もスマートフォンを離すことがありません。それは、常に⾃分に取って優良な情報を⼿中に収めているのと等しいのかもしれません。

だからこそ、スマートフォンによる写真撮影もまったく問題視していません。ももふくでうつわとの邂逅(かいこう)を果たした人は、その感動から写真を撮りたくなるようです。

ですから、夢中になって写真撮影されているお客様に、無⽤な声がけはせず、静かに⾒守っています。中には写真撮影の許可をわざわざ得て自分のInstagramに載せている⼈も。そうした⼈達の⾏動が、店の宣伝につながるのだということを田辺さんは体感しているのです。

Instagram は、その情報の即時性もさることながら、画像という強い情報で視覚に訴え、その効果が早い段階でわかります。だからこそ、店内の撮影をウェルカムにしているのかもしれませんね。

 

店舗情報(2018年6月11日時点)

うつわ ももふく

所在地 〒194-0013 東京都町田市原町田2-10-14 原町田ハイツ101
営業時間 12︓00〜19︓00
定休⽇ ⽇・⽉・祝
電話番号 042-727-7607
アクセス ⼩⽥急線「町⽥駅」⻄⼝より歩10分、JR横浜線「町⽥駅」北⼝より徒歩8分
公式サイト https://www.momofuku.jp/
twitter https://twitter.com/utsuwa_momofuku
facebook https://www.facebook.com/utsuwa.momofuku/
instagram https://www.instagram.com/utsuwa_momofuku/

 

ギフトラッピングについて

ギフトラッピング⽤の包装紙は、やはりシックな茶⾊。うつわをていねいに緩衝材でくるんだあと、箱に⼊れてから包みます。

うつわの大きさや形に合わせて数種類の包装紙を、大きい場合はセンターでダーツをとっておしゃれな箱包みにします。箱に合わせて包装紙を定規で切ったりすることはめったにありません。

とにかくその⼿早さにびっくり。これも、店のオープンに備えてあらかじめラッピングを習いに⾏っていたようです。

とにかく勉強家。何が必要かをきちんと把握して、事前に取得してから実践に⼊るところなどはきちょうめんな彼⼥の性格を如実に表していると言えるでしょう。

ギフトラッピングは無料で対応してくれます。⾃分で使うにしても、⾃分への特別なギフトとしてラッピングしてもらいたくなるほどです。ラッピングが素敵だから、箱を開けるのももったいない気分になります。

海外への発送は?

これだけ趣味のよい上品な和のうつわですから、海外のファンから、購入に関して相談があるにちがいない。そう踏んで思い切って海外発送をしているか聞いて⾒たら、やってはいないとのお返事。

というのも、海外は配送状態が非常に荒っぽく、うつわという品物の性質上、安心して発送できないからです。

魅⼒的な和⾷器、それもクラフトマンシップあふれるものです。⼀品物という特異性もあります。そのため、壊れることには非常に敏感です。

ももふくで⾦継ぎのワークショップを不定期に⾏っています。壊れてもなお、⾦継ぎすることで⻑く愛⽤してもらえる、⻑く⼤切にして欲しいという思いから⽴ち上げています。

実店舗とオンラインショップの雰囲気に違いがないから安心!

店主の田辺さんは、ももふくに関するすべてをほとんどお一人でやっています。ウェブサイト作成も人任せにせずご自分で対応されてきたようです。そのせいか、HPもFacebookもInstagramもTwitterも、すべて印象にブレがない。

おしゃれできちんとしていて、とても静かな雰囲気。

実店舗ともほとんど印象は変わりません。ただ、うつわの感触や重さを実感できるのはゆいいつ実店舗でできる経験です。駅から少し歩きますが、⽥辺さんと彼⼥の愛するうつわ達に会いに来る価値は絶対にあります。

まとめ

いかがでしたか︖ももふくのうつわは使いやすく、出しゃばらない美しさにあふれています。⼈の暮らしを彩るうつわ、普段の⽣活の⼀品物をお探しなら、原町⽥の住宅街の端、⼩さなお店に⾜を運んでみてください。あなたを映すうつわがそこにあります。

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