多肉植物とドライフラワーのお店「なかや植物店」

掲載記事|BeCafe(現在はサイト閉鎖)

 

町田市はここ40年くらいで東京の街並みらしい風情を帯びるようになった街です。東急ハンズに、東急デパート、さらに109(ワンオーナイン)と、原町田と言われるエリアには東急グループが連なります。

そこからほどなくすると見えてくる仲見世商店街はテレビ東京のプログラム「アド街ック天国」で紹介された古くてディープな飲食街。

町田を古くから知っている人は、その賑やかさこそが都会の象徴と思うかもしれません。

今日ご紹介する「なかや植物店」は2018年4月にオープンしたばかりのお店。仲見世や109をやり過ごし、住宅街へ続く静かな生活道路に面しています。

 

多肉植物がお出迎え

エアープランツも豊富に取りそろえている店内。ナチュラルな雰囲気で統一されている。

ガレージをほうふつさせるその店は戸外の光を利用して、多肉植物とドライフラワーが見事にレイアウトされています。男性2人が協同経営する花屋。それも、おしゃれな雰囲気の男性が店に立っているのです。置いてある植物もコーデックスという根・幹・茎が肥大化した多肉植物。それらを店舗の半分で扱っていて、もう半分はドライフラワーが占めています。

多肉植物はここ数年根強い人気がありますが、なかでもコーデックスは芸術的な美しさを兼ね備えた一品物が多く、グリーンインテリアの旗手と言ってもいいでしょう。

ほかにも大きく成長したサボテン類も目を引きます。何よりもここの植物の状態はすごぶる良いのです。ていねいに扱われているのがよくわかります。量販店に行くと、たまに多肉植物がひどい扱いを受けていて、悲しくなったりしますが、こちらはその心配はありません。

その雰囲気は植物というよりはオブジェといった感じが近いかも。コーデックス好きな人なら、お店に来て頂ければわかるはず。

初心者の方でも、多肉植物のある空間レイアウトなどを体感することができます。
こんな風に飾ったり、置いたりして楽しむのだということを、お店の2人はよくご存じなのです。

玄人(くろうと)受けする店内ディスプレイ

かたやお店の半分はドライフラワー。生花は置いてありません。多肉植物とドライフラワー。それが驚くほどマッチし、美しい景色を醸し出しています。

どうしてドライフラワーなのか。このお店の代表者である中川勉(なかがわ つとむ)さんにお話を伺いました。

どうして?の問いに、”花がかわいそうだったから”と迷わず答えてくださいました。
彼は今のところ2つのお店を掛け持ちして稼働する日々。今はまだ恵比寿にあるナーセリードレッシングの店長として勤めながらこのお店を経営しています。

ナーセリードレッシングでのお仕事は、店舗や講演会、テレビ局内の生花のディスプレイが多く、注文も多数。お花がかわいそうという素直な感想は、その仕事に10年ほど関わって働いている彼だからこそ、気付いたことでした。

 

シビアなお花の世界

ディスプレイ用の生花は非常にシビアなものを求められると言います。ディスプレイはその空間の雰囲気を決めてしまうものなので、デザイナーが望んだものが、その花のベストな状態になるのです。

そのため花は少しでも開いてしまったら鮮度が落ちているということで除外されてしまいます。花萼(かがく:花のがくのこと)でネジを巻くように、タイトにしまった花が良いとされるようで、除外されてしまう花はディスプレイはおろか、アレンジメントで売ることさえも許されない雰囲気。大量に仕入れた花ですから、ディスプレイに使われる花はごく一部。このほかのものは除外され、処分されるほかないのです。

素直に花がかわいそうだと感じたのは、かつて彼が都会の夜の繁華街での厳しい競争社会で花に癒された経験があったから。都会ですり減っていく自分を癒やし、この世界に導いてくれた花をもっと大切に扱いたいと思ったからだと言います。

 

ドライフラワーの持つ清楚な美しさを引き出す

お店にあるドライフラワーはすべて中川さんの手によるもの。太田市場で花を仕入れたら、それをドライフラワーに仕立てています。今のところは30種類くらいですが、ゆくゆくはその倍の60種類くらいを用意したいと考えています。

店内のディスプレイもすべて行う中川さん、ドライフラワーのアレンジメントもお手のもの。どんなシーンでどんなお花をプレゼントしたら良いかなど、わからないことがあれば尋ねて聞いてみてもいいし、ブーケを作ってもらう感覚でアレンジしてもらうこともできます。包装紙はドライフラワーの淡い色合いに合わせて極めて薄いグリーンや白。細めのひもを結びます。これってトレンド?プレゼントには細いひもをシンプルに結ぶのがはやっているようです。

夜の競争社会から身を引いた後、華道家として歩み始めた中川さん。修業をするうちに開けていった花の世界。そして行き着いた”生花を扱う世界”で見た現実。今また、ドライフラワーのパイオニアとしてこのお店を立ち上げたように感じました。このお店ではおそらく生花(せいか)は扱わないのではないかな、と静かに自分に言い聞かせるように話してくれました。”もったいない”から始まったドライフラワーは、いまや別の美しさをまとって私たちを魅了します。

ドライフラワーの美しさは加賀友禅の美しさに似ています。絢爛豪華な中にあえて虫食いや枯れたものをあしらい、美を際立たせる。ドライフラワーの美しさは、そのたたずまいにかつて誇っていた生花としての美が感じられるからかもしれません。

このお店ではドライフラワーだからこその美しさもさらに備わり、ほかのインテリアと組み合わせれば、出しゃばらないその美しさに共鳴するかのようにほかのインテリアも引き立つのです。

 

構想4年、ようやくお店の立ち上げ

一方、共同経営者の中村忍(なかむらしのぶ)さんも同じくナーセリードレッシングのご出身。中川さんが店長、中村さんは店員として日々働きながら、このお店の構想を4年ほど練っていたとか。

2人で店の世界観を共有し、コンセプトも決めてこの形にたどり着きました。店舗に鎮座している大きな木のテーブルは、腕に覚えのある中村さんの手作り。店の什器(じゅうき)はほぼ2人で手作りしていったそうです。

多肉植物は主に中村さんが仕入れたり、小さな苗から育成し、ある程度作品に仕立ててからお店に出します。彼らの口からは確かに”自分たちの作品”という言葉は出るけれど、決して”自分たち”が出しゃばらないのも彼らのスタイル。

商品として購入した人が、その先は自由にする。好きな器に植え替えてもよし、自由にしていいよう、それ以上の指南はほとんどしません。もちろん、植物の基本的な扱い方は、購入者にわかりやすいように手書きで簡単な取説(取り扱い説明書)をお渡しします。

エケベリア類はちょうどお花が終わった時期

説得力があるのもうなずけます。というのも、中川・中村両氏が育成してその植物の癖や性格をきちんと把握しているから。単に仕入れているだけではそこまでの細やかな心遣いはできないでしょう。コーデックやサボテンのほか、エケベリアやセンペルビウムといった、比較的扱いやすい多肉植物も置いてあります。簡易なプラ鉢に入った多肉植物と、ちょっとおしゃれな鉢に入った多肉植物の2種類があるのは、購入者の自由な発想や生活スタイルに極力寄り添い、グリーンインテリアを気軽に楽しんでもらいたいから。

テラリウム用の器にドライフラワーをデコレート

お客様とは近すぎず遠すぎず、程よい距離間を保っている2人。インタビューして感じたことは、お二人ともその立ち位置がしっかりとわかっているということでした。つまり、お客さんの自由を一番に尊重してくれるということ。

ともすれば、自分の主義主張を押し付けしたがる世の中で、窮屈な思い、もやもやした鬱憤を抱えている人は意外と多い。そんな時代だからこそ、自分の思うとおり、自由にさせてくれる心地よさは何にもかえがたいものがあります。このグリーンインテリアのお店は、そうした煩雑で複雑な世界から生まれる澱(おり)や人間関係も、自分の体験を通してわかっているということ。だから居心地が良いのでしょう。

 

さいごに

インスタもFacebookもTwitterもSNSも、一応全部充実させたいとは思っているものの、なかなかそこまで手がまわらないもので、とちょっと照れながら話してくれる中川さん。オープンから3カ月、お店には常連さんも訪れるようになりました。構想をあたためて立ち上げたお店だからこそ、ゆっくり育てて行きたいという思いが伝わってきました。

冬はクリスマスに向けドライフラワーのリースを考えてみようかな、とわりとのんびりと答えてくれた中川さん。商売にあくせくせず、ひょうひょうとした彼の生き方こそ、なんとなくほっとした気分にしてくれます。時間の早さがそこだけとてもゆっくりと感じられる、不思議に居心地の良いお店です。

 

店舗情報(2018年7月18日時点)

なかや植物店

所在地 〒194-0013 東京都町田市原町田4-12-4
営業時間 11:00~20:00
定休日 水曜日
電話番号 042-722-6080
アクセス 小田急線「町田駅」西口より歩10分、JR横浜線「町田駅」北口より徒歩8分
URL https:// nakaya-shokubutsuten.tumblr.com/(現在休止中)

※2021年に横浜、馬車道に移転

ショップURL https://nakayaplants.base.shop/

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