会場は〝かわいい…‼″のため息でいっぱい  リサ・ラーソン展 創作と出会いをめぐる旅

掲載記事|ナンスカ

 

2020年2月23日から3月4日までの11日間にわたって、東京は銀座にある松屋8階イベントフロアで「リサ・ラーソン展 創作と出会いをめぐる旅」が開催されました。

2020年3月3日(火)、松屋銀座で開催されたリサ・ラーソン展の入り口風景

記者が展覧会を訪れたのは折も折、COVID-19 (新型コロナウイルス)感染拡大を避けるため、政府が不要不急の外出を自粛するよう要請したさなかのこと。そのせいか、銀座は閑散としており、展覧会会場も明日が最終日というのに静まり返っています。

来場者もほとんど皆マスクを着用。松屋の店員さんも皆さんマスク着用で、消毒薬で手指を消毒するよう促されます。なんだか異様な光景よね。中にはマスクなしの猛者もいらっしゃいますが、何となく責めるような視線が。記者は小心者なので、マスクなしでは街を歩けません。

かくいう松屋も営業時間を本来なら10時から20時までのところ、11時開店の19時閉店という時短で対応。この展覧会も残すところ数日となったところで時短は余儀なくされましたが、急遽中止という憂き目には会わずに済みました。

 

作品が醸成されていく様子が手に取るようにわかる

展覧会では約220点ものリサ・ラーソンの作品と関連する作品群が展示されています。初期のころから現代のものまで、ユニーク・ピース(一点物)を中心に取り揃えているのに加え、彼女の親しい友人として、または同僚として、彼女の作品に強い影響を与えた作家たちの作品も展示。それらの作品はすべてリサの収蔵品のようです。

「ネコ(ユニークピース)」1970年頃 リサといえばネコが印象的

彼女自身の作品を見ていくと、彼女はアーティストやクリエイターとの交流からインスパイアされて作品が生み出されていることがわかります。それも、友人として交流したことが作品のベースになったり、生徒として薫陶を受けた結果、言葉から受けた感銘が作品に大きな影響を及ぼしたりと現れ方は実に素直なのです。

彼女自身の作品には、彼女の生活や暮らし、考えや生きざまが如実に語られています。彼女自身は器や皿などよりは、本業の合間に作ったフィギュアや置物が有名になっているわけですが、見るだけでつい笑みがほころぶその造形は、手にする人をいっぺんに魅了する力があるのです。身近な陶器だからなのでしょうか、彼女の作品がなぜこうも日本の女性を虜にするのか、言葉にはしがたいのだけれど、肌感覚でわかるというが展示を見た一番の印象です。

「ライオン(アフリカシリーズ)」製造1968年‐現在 アフリカシリーズの代表格 ライオン。まるでどんこシイタケみたいなフォルム

 

NHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」でさらに注目

リサは学生時代に伴侶であるグンナル・ラーソンに出会い結ばれます。そして今も夫婦でアーティストとして生計をともにしています。折しも、女性陶芸家の半生を描くNHK・朝の連続テレビ小説「スカーレット」が放映中ということもあって、陶芸の世界を身近に感じて足を運んだ人は多いかもしれません。

ドラマでは主人公は離婚してしまいますが、リサ自身は〝とも白髪″の言葉が示す通り、夫婦睦まじく年老いても一緒にクリエイティブな仕事に打ち込んでいるのです。

リサとグンナル(グスタフスべリのリサ・ラーソンのスタジオにて)(1960年代)(C)Bo Dahlin

リサ・ラーソンはフィギュアから派生したイラストレーションを生活グッズに展開したことで世界的に有名になり、日本でも爆発的に人気が出ているわけですが、今回の展示会では本来の陶芸家としてのアーティスティックな部分がフィーチャリングされています。

彼女のフィギュアはキュビズムの逆バージョンというのか、不思議な世界観があるのです。立体的でありながら、顔などは2次元で表現されています。作品を後ろ側から見るとそれがよくわかります。立体的に作られているのですが、顔が2次元の世界観なのです。特に横顔は一方向からだけの視点で描かれています。
展覧会会場の大きさにも制約があるため仕方ないとはいえ、後ろからも見ることができたらいいのに。せめて彼女のフィギュアは360度で見られるように展示してほしかった!

ユニーク・ピースの大きさや土の感じ、立体物としての重量感はやはり直に見ないと図録では実感できないかも。展覧会の醍醐味ってまさにそこですよね、絶対におすすめです。

図録も充実。でも立体物はせいぜい2方向でしか紹介してないのがちょっと残念なところだ

 

日本との深いかかわり リサのビデオメッセージに感動

展示の終盤、最近撮影されたとおぼしきリサ・ラーソンの近景として、ビデオが上映されています。その中に、リサが日本に寄せる思いをメッセージに託しています。それはもう心を打つメッセージです。

年老いた彼女が今もまだ制作し続けることの意味を穏やかに語り、日本と日本のファンに寄せる思いを率直な言葉で語りかけるのです。

名声もすべて手中に収めた彼女の言葉だから重みがあるのでしょうか?
生涯を陶芸とデザインに費やし、今その人生の終盤に至っても、創作への思いは変わらずにいる姿を見たからでしょうか?

〝私の作品を愛してくれてありがと″の言葉に、そのすべてがあると感じました。彼女の作品には万人の心を動かす愛にあふれているのです。義と愛、誠意。古いようですが、人形劇「南総里見八犬伝」に出てきたあの水晶の玉(ぎょく)に浮かぶ文字のひとつひとつが彼女の作品には表れているのです。悪しき政治にはちゃんと発言し、その一方で家族との楽しいひとときを大切に過ごす。市井(しせい)の人々のつつましやかで驕らない暮らしへの喜怒哀楽を、気取らず、気負わず、彼女はフィギュアに託しているのです。

「ネコを抱いた女性(ユニークピース)」1959年‐1962年頃 /「ロッタ(ラーソン家の子どもたちシリーズ)」製造1962年‐1979年 会場内では彼女の作品にただただかわいいのため息交じりの声が聞こえてきた

 

ショップでリサまみれ。ユニーク・ピースには手が届かなくてもこれなら!
会場を出ると、目の前にはリサ・ラーソンのグッズを売る特設会場が広がっていました。ちょっと古びた雰囲気のガラスのショーケースには彼女のユニーク・ピースから工房で量産される前の陶芸作品が販売されています。

値段ついているのだな、とチラ見したら、そのお値段の高さにびっくり!とてもとても手が出ませんよ。これ、松屋の美術商部の取り扱いなのね。こんな風に置いちゃうのね、展覧会の延長線上に。

そこからちょっと離れたところには工房や陶器会社で作られた彼女の量産品や日本限定販売の陶器が並んでいます。この辺は頑張ったら手が届きそうなお値段。

さらにさらに、展示会会場から離れれば離れるほど、ちょっとずつ手に入れやすい値段で使いよさそうなグッズへとショップは展開していきます。トートバッグにハンカチ、カッティングボードと、リサのデザインが使われている日用品が並ぶのです。

特設会場内で、リサと日本とのゆかりの深さを感じる販売コーナーがありました。彼女が日本のファンのために特別にデザインした干支の置物が並んだり、東北大震災や熊本の震災に心を痛めた彼女が復興支援のために企画した陶器や木製の置物などが売られていて、これらの売り上げの一部は復興支援に当てられるのだと販売員の女性が教えてくれました。

何でもリサが触れていたスウェーデンの土と、益子焼に使われている土が非常に似ていて、彼女自身、とてもシンパシーを感じているのだとか。
確かに言われてみれば、そうかもしれません。彼女の陶芸作品が何となく日本的なのも、うなずけますね。

タオルを2種類、購入しました。犬のタオルは今治ブランドですって。

 

リサ・ラーソン展、鑑賞するチャンス、あるかも

東京でのリサ・ラーソン展は3月4日に終わりましたが、リサに触れるチャンス、まだあるかもしれませんよ。およそ2年をかけて、全国を巡回予定なのです(2020年1月現在)。
このあと、2020年3月には滋賀県立陶芸の森に、2020年7月にいわき市立美術館での開催が決定しているようですよ。

今後、どこを巡回するのかは美術館や展覧会の情報をチェックしてみて。なお、リサ・ラーソンについては専用サイトhttps://www.lisalarson.jp/でも確認してみてはいかがでしょう?

「ブルドッグ」1972年

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