2019年10月22日、即位礼正殿の儀で祝日となったこの日、AKRがオーナーを務めるショップ「EVERYDAY SUNDAY」(エブリデイサンデー(エブサン))が渋谷丸井1階にあるBASEの常設エリアにポップアップストアとして1週間限定でオープンしました。この日、渋谷は冷たい小ぬか雨が降り続きます。立て続けの台風襲来で疲弊している被災者を憂えて即位を祝うパレードが延期されたこともあり、人出が少なくなったことは否めません。
9月25日に店を閉めたエブサンが1か月足らずで渋谷に出現したその理由は、11月1日に控えた新店舗のプロモートを兼ねた予行演習だと筆者は考えていました。というのも、古着も新しい服飾も雑貨も大幅に縮小し、AKRの作品であるキャラクターグッズをメインで展開する店舗だと聞かされていたからです。
「EVERYDAY SUNDAY」ポップアップストア オープン初日
レガロビルの2階にあった店舗の大きさは同ビルの1階に移ったことでやや狭くなりました。しかしながらその狭小さが秘密基地や隠れ家的な雰囲気を醸すことにつながったと前回記事にしたのですが、新店舗はこのポップアップストア並みに小さいということも聞かされていました。
したがってここに出すストアは少なくとも新店舗の雰囲気に近いと筆者は踏んだのです。ここで出店する意義はまさに新店舗がこれまでと違ったスタイルで通用するかどうかの試金石で挑むのだろうと考えていたのです。
渋谷BASEポップアップストアとは
渋谷BASEポップアップストアへの参加は、BASEとショップオーナーとの意向が合致しないと実現しません。BASEは“あなただけのネットショップが、無料でかんたんに!”をコンセプトとするフリーのネットショップ作成サービス。最近コマーシャルにタレントである元AKB小嶋陽菜を起用し、無料で手軽であることを最大の強みにサービスの浸透を図っています。
渋谷BASEは45万点ともいわれるBASE利用者を対象に、“新たな出会いを生み出す空間”としてBASEが提供する出店ブースのこと。渋谷の丸井1階の一部エリアをBASEの出店エリアとして押さえているのです。
出店の必須条件はBASEに登録していること。対面販売が基本で、販売手数料15%以外は無料という点が目を引きます。もちろん、BASE側も出店してもらうからには販売手数料の見込めるショップにやってもらいたいという下心はあるでしょう。
利用者には渋谷BASEへの出店の勧誘があり、いつとは判然としないまでも、エブサンにも声がかかっていたようです。
渋谷BASEでは出店におよそ4か月程度の準備期間を見ていますが、空き状況によってはすぐに出店できる可能性もあります。出店にかかわる諸費用がすべて無料とあって、渋谷で店を出すという希望が手軽にかなえられるというのは非常に魅力的です。実店舗を持たないショップでは、対面販売を行う実体験を得られる貴重な機会ともいえるのです。
ポップアップストアは利用者のショッププロモーションが最大のミッションとも言えます。エブサンもこの渋谷BASEに出店するにあたり、それを使命として掲げていたに違いないのです。
宣伝効果抜群のシチュエーションがそろう
渋谷BASEのポップアップストアは出店者側が期間を選ぶことができます。今回エブサンは22日から28日まで1週間の出店を決めました。幸いだったのはこのうち休日が通常は1回(日曜日のみ)のところ、2回(祝日と日曜日)あったこと。平日だとどうしても仕事に忙殺されがちな人も、休日なら足が向くだろう……ということで、エブサンファンの中には例により遠方から駆け付けた人が。
インタビューできたのは千葉から来たカップル。男性は4年来のエブログファンで、彼の影響で彼女もくまのまーくんを愛用し、オープン初日にたっぷりとグッズを購入していました。
AKRに会いたいからこそ店を訪れる客が多いことは周知のことなので、もっぱらSNSを駆使して店を留守にする時間を告知したり、店を始めてから3冊目となる「エブサンノート」に来店の足跡を残せるように心遣いがなされています。
さらに10月末の国民的なイベントともなりつつあるハロウィーンが好条件につながります。週末ハロウィーンで渋谷に繰り出す人々の多さときたら、それは想像を絶するほど。渋谷のハロウィーンはハイティーンやミドル層によって占められており、こうした人たちに向けて訴求できるのも好都合でした。
事実、26日、27日は土曜と日曜日にかかるため、この日のために新商品を投入。ハロウィーンを特に意識したわけではないのでしょうが、天使まーくんとデビルまーくんをデザインしたトレーナーやTシャツが登場しました。
ちなみに27日はAKRのホームグラウンドでもある相模大野でも大々的にハロウィーンにまつわる催しが商店街で行われていました。伊勢丹閉店時の騒ぎにはかなわなかったものの、子供たちがトリックオアトリート!と恥じらいながら練り歩く仮装行列が実にかわいらしく、おとなしいものだったことをここに記しておきます。
元・ぼくりり たなか氏がポップアップストアに登場!
このポップアップストアのロケーションが、神奈川県相模原市の一エリア相模大野ではなく、東京都23区、かつては若者の街と言われ、今や再開発でさらにグローバル化が進む“シブヤ”であることを強調しておきます。
レペゼン相模大野である彼だからこそ、なめられてはいけないと思ったのかどうかはわかりませんが、ハロウィーンで沸く27日にアーティストである元ぼくのりりっくのぼうよみの「たなか」氏を2時間だけスタッフとして投入するイベントを開催するのです。
「ぼくのりりっくのぼうよみ」はご存知の通り、時代の寵児となりつつあった矢先に突然引退?し、なぜ辞めたのかが判然としていない気鋭のアーティスト。現在は映画やクイズ番組など地上波での出演が増えてきています。謎めいているのはアーティストとしての活動やライフスタイルだけでなく、その面立ちも。言うなれば男でも女でも、どちらでもいける顔、ジェンダーレスな美貌の持ち主なのです。
彼はその発言の過激さゆえにコアなファン層が厚く、この日のイベントは以前から告知されていることもあってか、ほぼたなかを囲むファンイベントの様相を呈します。この形態のイベントもたなかにとっては初体験であったようです。
そもそも一日スタッフというイベントも、最初はAKRとたなかとの純粋な交友関係から生まれたものと類推されるのですが、たなかが有名アーティストである段階で、友達が手伝いに来たというレベルでは済まなくなったというのが本当のところではないでしょうか。
いずれにしろ、たなかとの縁(えにし)については次々回、クリエイターズファイルでのインタビューで深堀りできればと思っています。
マルイの渋谷BASEで販売なのに渋谷東急をデザインに取り入れる厚顔な?センス
ポップアップストアでもAKRのゆるりとした、それでいて毒をちょっぴり含んだユーモアは全開です。渋谷BASEは丸井の中にあるというのに、丸井を描いたものはなく、ライバル店でもある東急をそのデザインに取り込むというオトボケぶり。それとも意図してやっているのでしょうか?
渋谷は確かに東急が代表的なランドマークになるとは思うのですが、渋谷BASEから見えるMODIを見る限り、それをランドマークにしたデザインを持ってきてもおかしくはないと思うのですが。
厚顔なのか、おとぼけなのか、真意を測りかねるところがAKRの面白さでもあります。
初日のストアに並んだレペゼン相模大野の品物はどれも都会:渋谷VS田舎:相模大野の構図が見え隠れします。今回ポップアップストアに持ってきたアイテムは新店舗のものも含め15種類ほど。それらはいずれもアイロニーや自虐で構成され、都会への羨望を織り込みつつも、相模大野にこだわり続けるエブサン流が貫かれているのです。
レガロ店の閉店からわずか1か月足らずでのポップアップストアオープンは、とにかく忙しくドタバタだったことがTwitterやブログから手に取るようにわかります。特にTwitterではポップアップストアの日報でも見るかのようにていねいに接客ぶりが伝えられています。
こんなに忙しくて、そんなに追い込んで、“AKRらしくない”と言えばそうです。というのも彼自身はゆるっとしたのんびりしたところを自身の売りにしているのですから。
それでも、新店舗オープン前にこれを設けたことが、AKRとエブサンのプロモートとしては大成功であったと実感できます。才能があるのなら、惜しみなくそれを発揮し、プロモートすべき。それが都会的でない、洒脱でないとしても、これほどまでにクリエイターやアーティストがあふれる今、少しでも頭角を現すにはできる限りのことをすべきだと思うのです。
その点AKRは深い考えなどないまま、プロモートをやっているように周りに見せるところがうまい、策士だな、と思います。
ちなみにAKRがポップアップストア出店を決断した理由は、レガロ店閉店後から新店舗オープンまでの1か月ちょっとが無職になってお金が心配だったから、という理由だそうです。それをしれっと言ってのけるので、ふざけているのか?とも思いましたが、本心かもしれないので追及できませんでした。
真偽のほどは自身の目で確かめてほしい。11月1日11時、相模大野銀座にEVERYDAY SUNDAYがオープンします。
この模様は次回、「クリエイターAKRの疾風怒涛の3か月 EVERYDAY SUNDAY相模大野銀座店始動編」で詳しくお伝えします。お楽しみに。
店舗情報(2019年10月8日時点)
店舗名 EVERYDAY SUNDAY
オンラインショップ http://everydaysun.thebase.in/