何気ない日々の暮らしを愛する人の店 四歩(しっぽ)

掲載記事|BeCafe(現在はサイト閉鎖)

 

お店のサイトでは吉祥寺駅から徒歩10分とあります。取材日はまだ残暑が厳しく、記者が著しい方向音痴のため、お店に取材開始時間にたどり着けないことが怖かったので、吉祥寺駅からコミュニティバスのムーバスを利用しました。

行き先は「北西循環」、3つ目の停留所「月見小路入口」で下車。すると、五日市街道をはさんだ対岸にお店の看板がありました。看板のある通り、五日市街道沿いはお店が建ち並ぶけれど、一歩中に入れば静かな住宅街が広がります。

ここが目指すお店「四歩」です。「しっぽ」と読みます。看板にしたがって進むと、道筋に半地下の店舗が。白くまぶしい緩やかなスロープを降りた先に、ガラス張りの引き戸がありました。

「四歩」はここ吉祥寺に居を構えてまだ半年というニューカマー。とはいえ、7年近く三鷹で営業していました。三鷹のお店が少々手狭になったので、お隣の吉祥寺に移って来たのだとか。

手狭になったとはいえ愛着のあったお店。できるだけ三鷹の店の雰囲気を生かしたいとの意向から、この場所に落ち着いたようです。

 

こぎれいできちんとした”暮らし”が息づくお店

雑貨側からのながめ

お店に入ると、店舗の半分がカフェ、もう半分が雑貨店と大きく分かれています。

雑貨のエリアには、古道具や古家具とともに生活に即したさまざまな品物が並びます。すべてオーナー御夫妻のお眼鏡にかなったものばかり。

仕入れはオーナーご自身であったり、スタッフであったりが目星をつけ、まず店舗に合っているかどうかをはかりに掛けます。

世間的に売れている物でも、お店の雰囲気にそぐわないものは除外されますし、オーナーやスタッフの感性に響かないものはやはり日の目を見ることはありません。

四歩のようなお店には、インテリア作家が直接商談に入ったりすることもあります。そうした売り込みの向きに対しても、一端持ち帰ってまずは店に合うのか、感性が合うのかを検討します。明らかに四歩には合わないとなった場合は、むげに断るのではなく、その作家の作品と合いそうな雑貨店などを紹介することも。

食品も置いてあります。こちらはカフェを併設していることから、実際使ってみて良かったものをセレクトして置いてあるのです。

もともとオーナー御夫妻は三鷹のインテリアショップ・Dailies(デイリーズ)のカフェ担当(奥さま)、家具の取引スタッフ(ご主人)としてもともと働いており、のれんわけでこのお店のオーナーとなりました。ご主人が代表の肩書きを持っているので今回の取材にもメーンで対応してくれましたが、この店の雰囲気や雑貨、カフェのメニューなどはすべて奥さまと女性スタッフがアイデアを出して提案、ご主人が経営面も把握した上で導入するかを判断しているのです。

オーナーの宮崎御夫妻。ご主人の匠(たくみ)さんは経営全般、奥さまの咲希(さき)さんはカフェの統括責任者で
す。

そう、この店が何となく居心地が良いのは、“自分と同じ暮らし向きの友達の家”の感じに似ているから。古いものもていねいにメンテナンスして使う。こぎれいできちんとした日常の生活がこのお店にはあふれているのです。

店内の物はほぼすべて売り物

聞けば四歩の中にディスプレイされているすべてが売り物のようです。たとえば古い絵本をストックする書棚や、ディスプレイで使用しているアンティークな家具など、値段は付いていたりいなかったりはしますが、ほぼ100%が売り物だといいます。

大物の家具などにはさりげなく見えないところに値段表が貼ってあったり。またカフェで使用している机や椅子に関しても、欲しいと言われれば、販売しますとのこと。そこら辺が非常に自由なのです。

こだわりすぎない、背伸びしすぎない等身大の生活

家具にしてもインテリアにしても、日常の暮らしに必要なもの。ですから、アンティークではない古道具や古い家具を店に出し、高級すぎない、でも質の良い服や食品を扱っています。

このお店の品物のコンセプトは、「等身大」。高級すぎたりして使うのがもったいないものはここにはありません。さらに体に優しいものは置くけれども、バリバリのオーガニック製品などは値段も張るし、無理には置かないのです。日々の暮らしはきちんとしていても良いけれど、厳格で息も詰まるくらいにルールで縛られた暮らしは続けられませんよね。

代表の宮崎さんはご自身をお店の在り方に対し「あまりこだわりがない」と言っていましたが、唯一こだわりがあるとすれば、「平穏に続いて行く日々の暮らし」を乱さないものがここには置いているのだと感じました。

 

カフェと雑貨は車輪の両輪

お店のオープンから30分ほどすると、カフェ部門が動き出します。口開けに来るお客様は雑貨とお茶を自由に楽しめるようになっています。というのも、雑貨とカフェは厳密な境がなく、出入りが自由だから。お茶をオーダーしてから席を離れて雑貨をじっくり見て行く人もいたり、その逆のパターンの人もいます。

カフェ部門と雑貨部門はこの四歩では切っても切れない関係で、言うなれば車両の両輪。どちらか一方がダメでもうまく経営が成り立たないのです。そうこうしているうちにランチタイムに突入すると、お世辞にも吉祥寺の栄えているエリアではけっしてないこのお店に、次から次へと女性客が訪れます。お目当ては、皆さんこのランチのようです。

四歩のカフェの定食は日替わりで毎日変わります。さらに定食は2種類から選べます。
秀逸なのはそのご飯。白米、玄米、五穀米から選べるのです。私はA定食の玄米をオーダーしました。この日のA定食は鶏と厚揚げの煮物。ほどよい甘みのしょうゆだしに鶏肉と厚揚げがこっくりとていねいに煮てあるのです。それと副菜もしっかりとそろっています。おみそ汁は本当においしかった!
何と言うか、だしの味にお野菜のうまみや甘みがしっかりと感じられるおみおつけでした。体に優しい味ってこういうことなのかも。

パサつきがちになる玄米は、もっちりしてくせになる食感。食後にスタッフの方に聞いて見ると、玄米の炊き方をこれまたていねいに教えてくれるのです。お水多め、浸水時間も長めにするのがコツだとか。もち米でもいれているのかと思うくらいのもっちり感、とてもおいしくいただきました。

調理師、栄養士がしっかり監修。何よりできるだけ手作りがモットー

お店を訪れる方の中には近隣にお住まいのご老人もいます。聞けばご常連の方で、ほぼ毎日通って来てくださるとか。
昼と夕方を一種類ずついただいて、時にはご家族で来られることも。

まさにこれが四歩のカフェのあり方なのです。毎日食べても飽きの来ない、心を尽くされた家庭の味。主菜や副菜を毎日変えることも大変なことなのに、主食のご飯は常に炊きたてに、ふかふかでつやつやのものを提供し続けることは非常に努力のいること。炊事をしている方ならわかりますよね、献立を考えるのが本当に大変だということが・・・・・・。

カフェ部門のスタッフは調理師や衛生士、栄養士など、有資格者を中心に全員が共同で献立を組みます。モットーはできるだけ手作り。けれど決して無理はしません。それから、オーガニックにこだわりすぎない。旬のものを使って金額内に収めることを目標にしています。

リーズナブルなお値段におなかいっぱいになる食事、よく見れば、器はどれひとつ同じものがありません。もともと陶器を作っていた代表の奥さまは、普段使いの器をカフェでも見立てています。

フォトグラファーと私は同じ定食をいただいたのですが、小鉢のひとつでさえも器は違っていました。それがまた楽しかったりする。器もまた視覚を刺激するスパイスなのだと思えるのです。これって目には見えない気遣いということかな。

この店を訪れる誰にでもこうした細心の心遣いができるのは、オーナーやスタッフの人柄がにじみ出ているから。ふと見れば、男性はオーナーただ1人で、あとは全員女性でした。

 

縁(えにし)で広がる世界

ご主人はとくに代表は大学卒業間近になっても、自分のやりたいことやなりたいものなどが漠としてまだ定まっていなかったといいます。当時、むしろ就職活動で忙しく企業を回っている友人たちに気後れしていて、周囲からは何となく”就活しない人”として扱われ、完全に乗り遅れた感じでした。

そのとき、今の在り方を決定したのが奥さまでした。当時はまだ付き合っていた2人、彼女が勤める三鷹のインテリアとカフェのお店Dailiesの社長に彼を紹介したことで人生が動き出します。

家具の輸入など、経営的な面で興味があった彼は彼女の勤めるDailiesに家具の取引について社長と話をする機会を得るのです。その時の面談のお膳立てをしたのが彼女というわけ。いろいろと話をする内に、社長から”ショップで働いてみないか? “と誘いを受けます。その結果、Dailiesへ。ひょんなことからこの世界に入りこむことになるのです。

縁は異なもの味なもの

四歩はDailiesの4番目の店舗。本当に小さな、大股で4歩ほどで壁に付いてしまうような(は少々大げさだけれど)大きさだったこともあり、4という数字にちなんで”四歩”、それを”しっぽ”と読ませています。
Dailiesで家具の取引を一手に任されるようになった頃、このお店も任されました。

”四歩”のかわいいロゴ、イラストレーター篠塚朋子(http://www.shinozukatomoko.com/)さんの作品です。

これも三鷹時代からの常連さんのお友達という縁。お店の雰囲気を説明し、描いてもらったもの。

結婚もし、子どもにも恵まれます。子どもを通じてのつきあいが広がるうちに、古書店の店主の方と知り合いに。それがご縁で、インテリア性の高い、飾ってもすてきな絵本を扱うようになりました。

古い道具の引き取りなどもそうです。人と人の、期せずしてできた縁がきっかけ。

人と人との縁とは本当に不思議なものです。どこかでつながっている。まるで導かれたかのようにつながっていくのですね。利害関係を期して近づいて行ったものよりも、深く長く付き合えるのかもしれません。

雑貨との出会いもそうです。お店を訪れたからこそ出会える雑貨もあります。手に取って初めて愛着の湧くものもあります。ネットショップのみのお店が増える中、実店舗のあるお店の醍醐味(だいごみ)とは、期すことのできないモノとの出会いなのかもしれません。

四歩の雑貨は好事家をうならせるすてきなものにあふれています。たとえばマッチ箱の外装など、レトロで美しいのです。会津の起き上がりこぼしも置いてあります。カフェを待っている間にいろいろとかわいいものを見付けてしまいます。

 

店舗情報(2018年9月12日時点)

四歩(しっぽ)

所在地 〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-18-25 BF
営業時間 11:00~22:00
定休日 木曜日(営業するときもあるのでウェブサイトの営業カレンダーでご確認ください)
電話番号 0422-26-7414
アクセス 吉祥寺駅より徒歩10分、またはムーバス(吉祥寺のコミュニティバス)北西循環行き「月見小路入口」下車徒歩1分
公式サイト http://www.sippo-4.com/
X(旧Twitter) https://twitter.com/sippo_cafe
Instagram https://www.instagram.com/sippo_4/
Facebook https://www.facebook.com/dailies.sippo

 

ギフトラッピングについて

シンプルだけれどかわいらしいラッピングは無料で施してもらえます。今回撮影したのは小さいもの用のラッピング。

この袋タイプなら、大きい物でも応用が利きますね!

 

まとめ

経営や店舗展開に注力するご主人と、カフェの運営や店舗の嗜好性を決定する奥さま。バランスがちょうどいい。というか、この人にはこの人でなかったら四歩というお店は生まれなかったかも知れません。ベターハーフという言葉がふと浮かんで来ます。

このお店には、ささやかであたたかなひとつの暮らしがそこにある感じがするのです。縁が人を結び、暮らしや仕事を結ぶという不思議さを感じました。

お店の空気も、カフェの食事も、日々の暮らしがどれほど大切か、いとおしいかが感じられる居心地の良いお店です。

ぜひ、吉祥寺北町にいらしてみてはいかがでしょう。静かな住宅街のなだらかなスロープの下に広がる静かな雑貨店です。

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