IKEAに代表されるおしゃれで洗練された北欧のインテリアとは対象的に、アンティークで素朴な味わいがあるのが東欧の雑貨の魅力です。
なかでもチェコの雑貨は、ロシアやハンガリー、東ドイツのそれとはまたひと味違う雰囲気をかもしています。
今回はちょっとかわいいチェコのアニメキャラをとりあげてご紹介します!
チェコってどんな国?
チェコはどこにあるのか、探してみましょう。東欧と言われるところですから、ロシアとかハンガリーとか、たしかその辺ですよね。あれ?東欧と言うより、中欧と言った方がよさそう。
チェコは東西に細長い六角形をしており、北はポーランド、東はスロバキア、南はオーストリア、西はドイツと国境を接しています。
正式名称はチェコ共和国。1993年にチェコスロバキアがチェコとスロバキアに分かれて成り立った国なのです。NATO(北大西洋条約機構)、EU(欧州連合)、OECD(経済協力開発機構)の加盟国でもあります。
ここでご紹介するのは主にチェコスロバキア時代、それも1950年代から1990年代のもので、ちょっとかわいいアニメキャラに焦点を当てていきます。
どこか懐かしい、アニメキャラクターの雑貨たち
クルテク
アニメの監督でもあるズデニェク・ミレルによるチェコ生まれのアニメーション・シリーズです。もともとはミレルの手によるロングセラーの絵本シリーズでした。
第一作「もぐらくんとズボン」は1957年に製作され、その後2002年までの間に、7作品の短編が世に出されました。
どこかで見たことあるような?と思った方も多いはず。以前はNHKで「ゆかいなもぐら」という邦題で放送されていたのです。
そのせいか、現在NHK Eテレで放送中の「ねほりんぱほりん」はクルテクそっくり。もしかしたらクルテクをオマージュしたのかも知れませんね。
とはいえキャラクターが似ているだけで、「ねほりんぱほりん」の番組コンテンツはなかなかエグくてびっくりします。おまけに人形劇だし。ちなみにおしゃべりがメインで、声の吹き替えには南海キャンディーズの山里さんと、タレントのYOUさんが担当しています。
クルテクの世界観
一方、クルテクは不思議なストーリーが魅力。ほとんど吹き替えがないというのも想像力をかきたてます。アニメーションは子どものお休みタイムに放送され、このアニメを見た後眠りに就く、というのがチェコでは一般的だったようです。
さらにクルテクの友達が非常に個性的でシュールなキャラクターであることや、奇妙な世界観などが広く受けいれられ、世界中で愛されてきました。
クルテク(Krtek)とは、チェコ語で「もぐら」という意味。 このひねりの無さもこのキャラクターの魅力なのでしょうね。
クルテクの友達もかわいい
クルテクの友達も個性的でとてもかわいらしいのです。どの動物も日本人にとってとても身近であることも親しみやすい理由かもしれません。
チェコの人が描くと動物たちはこんな風になるのですね。ちなみにクルテクもチェコ語で「もぐら」というように、動物にあまり名前を付けないようなのです。お国柄なのでしょうね。
クルテクグッズ
クルテクはさまざまなグッズに加工されています。コップに印刷されたり、バッジになったり。それではちょっとのぞいてみましょう!
東欧にはほかにもアニメスターが!
実はこの頃、東欧にはアニメーションから生まれたスターがほかにも登場します。
チェブラーシカ
クルテクが現れた1960年前後、ソビエト連邦に登場したのがチェブラーシカ。このお猿さんとも着ぐるみを着た子どものようにも思える奇妙な生きものは、クルテクと共通するものがあります。
チェブラーシカとはロシア語の古い俗語で「ばったり倒れる」という動詞を名詞化し、それに愛称を示す「シュカ」「シカ」が付いた形。直訳すれば、「ばったり倒れっ子ちゃん」とか「ドスンと落っこちたちゃん」とかそんな名前になるのです。
性別は男の子らしく、出身は絵本である「ワニのゲーニャ」の中に登場するキャラクターだったのですが、主人公であるゲーニャをすっかり食ってしまってほぼほぼ主人公の立ち位置になったのです。
それはなんといっても「不思議時空」。現実なのか空想なのか、さだかでないところがキモなのです。
クルテクに至っては、もぐらというおよそ主人公になりえない生きものがスターとなるというあり得ない発想がスタートとなっていますし、チェブラーシカの友人はハリネズミやワニだったりと、奇想天外な発想が何気なく形になっているのです。
クルテクもチェブラーシカも、そのストーリーはこれといったオチもなく、とりとめもない。けれども苦にならないのです。どちらかと言えば詩的なストーリーと言えます。
アニメや短編映画を見ていない人でも、そのキャラクターの持つほっこりとしたなぜか懐かしいかわいらしさに引き寄せられるのかもしれませんね。
北欧には鉄板の愛されキャラクターがいる!それは・・・
ムーミンです。トーベ・ヤンソンによるムーミン谷に住む奇妙な生きものたちが織りなす友情がなんとも言えず深いものがありました。日本では特に日曜日の7時半から30分の枠で放送されていたカルピスまんが劇場(のちの世界名作劇場)で爆発的ヒットとなりました。
ヨーロッパではタンタンが人気だった
この頃、北欧でも人気があったのはベルギーの作家によって作出されたタンタン(TinTin)。世界を股にかけて活躍し、まざまな事件を解決して行く少年は、北欧のみならず、ヨーロッパ中で子どもにも大人にも人気でした。日本で言えば、名探偵コナンみたいな感じなのかな。
日本でも、最近スピルバーグが実写映画化したせいか、注目され、専門ショップもあるほどです。
クルテクの象徴するもの
タンタンの絵本は、世界旅行がメインの冒険話なのですね。つまり、クルテクとかチェブラーシカ、ムーミンとはどちらかと言えば対極にあるようなアニメなのです。
クルテク、チェブラーシカ、ムーミンは、自分たちの住んでいる世界から決して離れないのです。
「限られた狭い世界で、最大の幸せを感じて生きる」――この辺が海に囲まれ、長い間鎖国をしていた歴史を持つ日本にぴったり合ったのかも知れませんね。
まとめ
クルテクがもぐらだから、親近感も
クルテクはモグラです。なぜモグラだったのだろう、と思いませんか?それは地上に出て来ても、すぐに自分のすみか(地中)に入り込んで隠れることができます。
クルテクの生まれた当時のチェコスロバキアは、共産主義下でさまざまなことに関して厳格な規制があったようです。
そうした中でも絵本は唯一、政治的な考えがおよばない子どもの領分として自由な発想がはぐくまれていきました。大っぴらに政治を批判することでなければ、許されたのです。
だからこそ、芸術家達が厳しい規制を許されているこの領域で、本領を発揮ししのぎを削るようになります。それはクオリティの高さにつながり、大人からも愛される芸術作品にまで高められていったのですね。
単なる子ども向けのキャラクターに終わらないのは、そうしたバックグラウンドもあるからかも。さりげなくお部屋のインテリアとして飾ったり、身近な筆記具にあしらわれていても甘過ぎないテイスト。クルテクにはそうした魅力が詰まっているのです。