インテリアの写真に何気なく写り込んでいるグリーンインテリアのひとつに、テラリウムがあります。最近ではカルチャースクールでも教室が開かれるなど、身近なモノになってきました。
テラリウムにはさまざまな種類と楽しみがあります。じっくり見てみましょう!
テラリウムって?
テラリウムとは、英語表記でTerrariumと書きます。テラは陸地を示すことから、陸上の生物、主に植物を透明な容器の中で育成するものです。
テラリウムには専用のガラスケースもありますが、金魚鉢やキャンディポットなど、透明な容器であればほぼすべてOK。植物を寄せ植えし、インテリア装飾として観賞栽培するのです。言うなれば、それは室内にあるミニガーデン。
半密閉状態の容器内では、土や葉の表面から水分が蒸発し、それが容器内に充満すると水滴になって土に吸収され、再び植物の根から吸い上げられます。容器内ではこの循環が繰り返され、一定の湿度が保たれることになります。極めて不安定ではありますが、ひとつの生態系ができあがるというわけ。
このことから、テラリウムには湿気に強く、弱光にも耐えられ、比較的生長の遅い小型の植物が適しているといえます。
テラリウムの生みの親は?
テラリウムの生みの親は、イギリスの医師で動植物の野外研究家でもあったウォード:Nathaniel Bagshow Ward(1791―1868)と言われています。
そもそもは瓶の中でシダや草、ガの蛹(さなぎ)などをいっしょに飼育していて、これらの植物が新鮮な水や空気のない封をした中で3年以上も生存していることを発見したことに始まります。
1833年、彼はこの原理をオーストラリア行きの船上でプリムラを用いて実験し、4か月以上たってシドニーに着いたときには、花が咲いていた事で核心を得ました。
当時は発案者の名をとってウォーディアン・ケースと呼ばれたそうです。
現在のテラリウムという呼び方になったのは1900年代の初めころ。この頃には容器に装飾や細工を施して利用されるようになったようで、インテリアとして確立しだしたのです。
いつ頃日本に紹介されたでしょう? 幕末には中国までその方法が伝わっていたのですが、日本に技術が紹介されたのは1910(明治43)年前後で、イギリスから園芸用具が多量に入ってきた時代。さらに本格的に普及するのは1965(昭和40)年ころからだと言います。
歴史を見てもかれこれ53年程度ですから、まだまだ日が浅い文化なのかも知れませんね。
こんなにあるテラリウムの面白さ
ひとくちにテラリウムと言っても、使用する植物などによって細かに分類されます。どんなものがあるのかさっそく見ていきましょう。
アクアテラリウム
アクアテラリウムはその名の通り、アクアリウム(水槽)とテラリウムの混在した栽培法です。
容器の中で上半分はテラリウムを楽しむことができて、下半分では水草と熱帯魚やめだか、金魚など、淡水生物との競演が楽しめます。
アクアテラリウム専用の水槽がセット売りされ、初心者でも気軽に始められるようになりました。
先日もアクアリウムに尽力したアクアデザインアマノ(以下、ADA)の創始者、天野氏の展覧会が、今年の1月に東京ドームシティで開催されたばかりですが、ADAではアクアテラリウムにも進出しており、同社の『侘び草(わびぐさ)』シリーズは、アクアリウムとしても、テラリウムとしても、またアクアテラリウムとしても楽しめる水陸両用の植物を苔玉状にして販売しています。
苔テラリウム
苔テラリウムは、容器内の植物を主にコケにしぼって栽培するテラリウムのことです。コケも近年人気のある植物で、栽培のしやすさや扱いの手軽さから、育てているマニアが多いのです。
コケは種類も多く、育成すれば花も咲きます。まさにテラリウムにすればそこには小宇宙が広がります。
ビバリウム
ビバリウムとは本来、「生体の生息環境を再現した飼育施設」の総称であり、アクアリウムやテラリウム、アクアテラリウムなどすべてそこに含んだものではあったのですが、日本の場合は総称としての意味よりも、ハ虫類(ヘビ)や両生類(カエルやイモリなど)を生育しているテラリウムを、愛好者達の間でそう呼んでいるようです。
ビバリウムに適した用器も、充実、販売されています。熱帯魚専門店などでは手引き書といっしょにセット売りされていることもあり、初心者でも気軽にトライすることができるようになりました。
インセクタリウム
インセクタリウムはインセクタ(昆虫)をメインにしたテラリウムのこと。昆虫館ではよく見る景色であると言えますね。ただ、インテリアとしてどうかと言われたら、私は絶対的にNOと言いますが。
パルダリウム
パルダリウムには明確な定義はありませんが、特に熱帯雨林を思わせるような植物をメーンにして、湿性環境を再現したテラリウムのことを示すことが多いようです。こちらもあえて水を噴霧することで、葉から水蒸気が出ている様子を再現するなどしているものがあります。ここまで来ると、ほぼ盆栽や、借景の世界に通じる凝り方と言えるでしょう。
インテリア性に富んだ入れ物各種
テラリウムは、手軽に始められるキットやセットがたくさん出回っています。とくに、栽培用の容器は必見。性能はもちろんのこと、インテリア性に富んだ形状のものが次から次へと販売されています。
言ってしまえば透明な容器であれば、それでよいのでは?とはいえ、土、植物などが容器内には入るわけですから、重量にも耐えられ、経年劣化にも耐えられる物質、ガラスということになるのかもしれませんね。
今回ご紹介するのは、どちらかと言えば乾燥地帯の多肉植物を中心としたテラリウムの育成に向いた容器です。アクアテラリウムやビバリウム、インセクタリウムやパルダリウムには不向きですのでその点はご理解くださいね。
金魚鉢
やはりもっとも手軽に入手できる容器の代表格はガラスの金魚鉢です。金魚鉢は近年、金魚の飼育には向いていないということから、熱帯魚専門店やペットショップでは見かけることは少なくなりました。けれどもホームセンターやフラワーショップなどではよく見かけます。インテリア性が高いからでしょうね。
テラリウムはすべて無色透明のガラスの方が向いているのですが、金魚鉢は縁のあたりに着色が施されていることも多く、そこがちょっとだけ難点といえるでしょう。
口径部が広いのも、植物を入れるのにはうってつけです。
ステンドグラス風容器
ステンドグラス風にガラス板をつぎはぎした容器は、透明である利点を生かし、使用する土をカラーサンドにしたり、ハイドロボール(ハイドロカルチャー用の代替用土)にしたりして、とことんインテリアとして見せる事を意識したレイアウトが可能です。
こちらも口の部分が広く開いていることから、植栽がしやすいのがメリットと言えるでしょう。
ステンドグラスもできれば透明のもの、もしくは単色のものの方が、テラリウムの魅力が引き立ちます。
つり下げ型容器
つり下げ型の容器はつり下げることはもちろん、平面において育成できるものもあります。
つり下げ用のスタンドも入手することも可能です。
ただし口が狭く、また小さいため、テラリウムと言っても1種類か2種類のごく小さめの植物しか植え付けることができないのが難点と言えます。
まとめ
いかがでしたか?ご紹介した容器はこのほかにもたくさん種類があります。
とはいえ、自分でテラリウムを作るなら、やはり扱いやすいものがいいでしょう。ADAで扱っているアクアテラリウムの商品はそのままテラリウムにも活用できるシンプルで美しいフォルムの容器が揃っています。お部屋の雰囲気を決めるテラリウム、まずは容器で選んでみるのもいいですね。